カメラを趣味としていくと、カメラに関する歴史に興味をもったり、憧れのカメラができたりすることがあります。
「あるかと思います」とは言いません。これは断言できます。
「あります」
私は
プラウベルマキナIII
というカメラに憧れがありました。
ドイツのプラウベル社が開発した「マキナ」の三代目となる機体。
私がこのカメラに興味を持ったのは日本製の「PLAUBEL makina67」シリーズがきっかけです。
このプラウベルマキナは日本のカメラ店「カメラのドイ」の運営会社がドイツのプラウベル社を買収し、ボディは小西六製造、レンズはNikonというこだわりを持って製作したカメラであり、まさに
カメラ好きのカメラ好きによるカメラ好きのためのカメラ
カメラ好きの究極形
を体現したようなカメラです。
実際にこのカメラには今も根強いファンが多く、中古カメラ市場においても高い人気で買取額も高価になっています。
究極のカメラ好きに選ばれたカメラ名の由来となったカメラ(ややこしいな)ってどんなものなんだろう?と当然興味が沸きますね。
ずっと興味自体は持っていましたが機会に恵まれずにいたところ、某オークションサイトにて信頼できる出品者から出品されているのを見つけ、入札。
熾烈な入札合戦の末(最後は血の涙を流しながら)落札に至り、自分の手元へ。
感動はひとしおでした。
…が、やはり経年のお品。シャッター周りの不安定さ、蛇腹、各ファインダーの傷み、各部のがたつき等々、そのままではカメラのポテンシャルを発揮するにはとても足りないと判断しました。(なお自分の撮影技術は無視できるものとする)
藁にもすがる思いでいつもお世話になっている修理職人のKさんに機体を見せたところ
「直りますよ」
とすぐに一言。
多分この職人さん、直せないカメラないです…
札幌で長らくカメラ修理店を営んでいらっしゃった方で、80歳を超えた今でも現役で修理を続けてくださっていることに本当に感謝しています。
修理してもらった機体がこちら。
1949年発売。いかにも金属!な見た目がたまりません。
レンズ交換も可能で、このアンチコマー100センチの他にも数本の交換レンズがあります。
が、いずれもなかなか手に入らず…このレンズ固定と思って大切に使っています。
フィルムバックもこの個体は6×6ですが、6×9や35mm対応のバックもあるそうで、いつか手に入れたいなぁと思いつつ。
さて、カメラを連れ出していきます。
道行く人、結構見てくださいます(笑)
レンジファインダーでピント合わせ、概ねの枠やフレーミンググラスで構図をとって撮影…
おお、概ねのフレーミングはばっちりです。
さて二枚目…三枚目…と撮っていきますが、ここでやらかします
フィルムの巻き上げを忘れて多重露光に。
昔のカメラはフィルムの巻き上げとシャッターチャージが別というものがほとんどでした。このマキナもその機構。
技術の進歩により、巻き上げとシャッターチャージが同時に行われる機構(セルフコッキング)が当たり前になっていくのです。
つまり、私は甘えていたわけです。文明の利器に。恥ずかしい。
シャッターチャージも撮るたび忘れてるし。シャッタースピード変えるのもシャッター切る寸前に思い出すし。
お作法が全くなってませんねぇ…と前オーナー様に怒られそう。
まぁこれはこれで勉強だし、多重露光という表現の幅が広がったとポジティブにとらえましょう。
このレンズ、近接での描写がすごく色気があるなぁ。とても好き。遠景はふんわりする気がします。(どちらも絞り開放で撮影)
フィルム交換をしたら記憶がリセットされるんでしょうか。また多重露光をやらかしますがめげない。
やっぱり近接の描写、すき。
中距離もいいですね。
一つ一つの操作がお作法のようになっていて、写真を撮ることへしっかり向き合ういい時間になったなと思います。
このカメラ、残念ながら店頭では販売予定ありません。私個人の趣味です。
カメラ屋のくせに店のブログに個人の機材やら失敗写真載せてて恥ずかしくないんか!?
という声も聞こえてきそうですが
いいじゃん。憧れのカメラ直ったから自慢したかったんだもん。
ということで(笑)
最後に未熟をさらに晒します。
コマ間が盛大にずれています。
巻きとめ機構がすり減ってしまっていたために、指標の位置で止めるのをしっかり意識しなければならず、それを怠った結果です…
これにしっかり慣れて、いつかピシッとコマ間のそろったネガを作り出したいものです。
(橋口さん(現像屋さん)きちんとスキャンしてくれてありがとうございます。)
こんな感じのカメラ好きがやっているお店「インヘリットカメラ」です。
カメラのお話ししに来てもよし、ぼんやりカメラを眺めるもよし、ついでにかつお節を買ってもよしです。
お待ちしてます。
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